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令和2年と5年の「頸椎手術病床記録」 
   
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平成9年 弟の入院(白根健生病院) 

  病に倒れた弟を看病した日々の思いを歌にしてみました。弟のことを忘れたくないという思い、何かしら残したいという 思い、つらいものだなあという思いを歌に託してみたわけです。
  現代仮名遣い・口語体で、分かりやすさに留意して創作してみました。  
      


1  テレビ見る力も萎えた弟に 今は何を 語りかけよう (弟の名前は力)

    

2  力萎え 明日を知れない弟に 話す話の 中身が薄い  

                          

3  弟の病(やまい)治らず見る庭に ゆずりはの葉 ひときわ青い

 

4  共産党は かくあるべしと 諍(いさか)った 年始の酒は 尽きてしまうか

 

5  力込め 明日を語るひとときが もてない辛さ くそったれ癌  
   
    (江國滋氏をマネてます・・・)
 

6  俺に似た爪をしている弟のふくれた足をそっとなでてみた

 

7  俺に似た弟の体(からだ)なで 同じ腫瘍の ある心地する

 

8  四十路にて逝った叔父らの面影が わが弟に重ねて見えた

 

9  癌病が 男盛りの顔を変え  お前を愛した祖父に似させる

 

  (同室の方々に接しながら・・・失礼かとも思うが・・・

10  ひたすらに命と向き合う人の目に 神の眼差し似たるを感じる

 

11  語り合うことの少ない患者たち あふれる思いどこにやったか
 

 
(病室の名札を無造作にはずす看護婦さんの動作に・・・) 
12  その名札 そっとはずせよ 看護師さん 昨日亡くなった Aさんの名札
 

13  黙々と父の足をさする息子の手 じっとその手を見つめる父の目


13 「明日からは きっと痛みが やわらぎますよ」と 白衣の天使 優しく語る
 

16  手際よく下の世話する看護婦 見ているだけの木偶(でく)の坊 我

 

17  血圧が一気に下がるを 弟は 「注射が速かったから」と 事もなげに言う

     (ゆっくりと時間をかけて注射してほしかったのだろうか?

        看護婦さんには ただしていないが・・・

 

18  「俺は モルモットだよ」と言い放つ弟 痛みに耐えつつ

 

       (弟の身体につながった機器と向かい合って1日中看病していた老母の言葉)

19  「なんでもねえ」一日だったと看護の老母 「アグリも見たし食事もとれた」と            

        「なんでもねえ」=楽だ  アグリ=NHK朝のテレビ番組 

 

    (弟の身体につながった機器と 向かい合って1日中看病していた老母の言葉)
20 「あの何かの数字が今日は20になったよ」と 我にこっそり 母は伝える



21  本人は 気付いていない 床擦れの 大きな穴が 吾を直撃

 

22  夏となり 戸ごとに見える 同じもの ごぼうのような 足と足、足

 

24 「帰ったら ビール飲むんでしょう」 と我に妻 思わず漏らす 病人の前

 

25  モルヒネで 痛みのとれた 弟の 語る話しに 瞬時やすらぐ

 

26  薬にて やや楽になり 弟は 痛かったときの わがまま謝る

 

27  ほんとうに病を治すもの食わせ 「元気になるぞ」と言ってやりたい

 






平成10年 自分の入院

 4月1日、肋膜炎で急遽燕労災病院に入院。その後、椎間板ヘルニアの手術で入院期間を1月半延長した3ケ月の入院体験から


     (働き盛りの50歳、突然、病にたおれて・・・)

1  何もしないで 春の景色を 眺めてる そんな人生が 近くにあった


2 やわらかな 日差しを浴びて 語り合う 思いはそれぞれ 病院の窓辺 
   

3  苦しけりゃ お互い様と 分かってる 深夜の病棟 痰をはく音

 

4  お隣は カーテン越しの おむつ換え モルヒネの混じった 臭気漂う

 

5 「はああい」が「いやだよ〜」と聞こえてる 生の言葉の不思議さ怖さ
   
 (インターホンが患者を疎ましく思うナースの気持ちをはっきり伝えた日、やさしい声の方が多いのですが)

6  ブロックの 痛い注射を 終えた後 の 「お疲れ様でした」 の ありがたさ


7 「お疲れさまでした。」「有り難うございました。」と会話がはずむ 心がはずむ



   
8 
(患者の悪態に業を煮やした看護婦と患者の真昼の決闘・・・)   
  
看「もう一本、刺してやろうか。」  患 「俺んのも刺してやろうか。ぶっといぞ」  看「早く退院したら。」

 

9 電話機で「さっき死んだ」と低い声 深夜の廊下 静かに伝わる 

   (4階の電話機は、今も廊下に出されたままだろうか。

                                                 
10 「出て行け〜や。出て行け〜や。」の老爺の声 他人様でも 気になる今宵

 

11  突然に外泊するとN氏言う  医師の説明 ありしその後

 

12 「やあだもう 耳遠いんだ」 お隣の 付き添い人は 大きな声だ

                

13  ちくちくと 治したはずの 胸痛み 小心者(しょうしんもの)に 夜がまた来る

   (抗生物質の投与による肋膜炎の治療、手術は無し)
              

14 真夜中に 「どうなさいました。」と うれしい声 身動きできない 術後のわれに

     (椎間板ヘルニアの手術後)

15 「おはようございま〜す」ときっかり7時の明るいナース

  (刺しなおしたり、静脈の外に刺して青黒くはれ上がらせたり、点滴の高さが低くて流れなかったり・・注射が下手なおたんこナースの挨拶にうれしさ半分

16  守門岳 雪形眺め 退院の 日数かぞえる 永い春の日

                  

17  真夜中も 車のライト 途切れなし 車馬の動きに 心休まず

   (一生懸命働いている運転手さんご苦労様です。何もしなくて良い自分の幸せと不幸を思う)



18  土手を越え 早苗の植わる 田に流れ込む 朝霧見せる スペクタクルよ

   (中之口川の霧が刻々と移動していく様は 自然が織り成す大舞台装置)    



19  病院で やること一つ 後の世と 後の生き方 思い巡らす

   (たまたま今回は軽い病で済んだが、不慮の事故でも遭わない限り、この後、いろんな病で何度か入院して、
                    あの世に旅立つことになるんだろうなあなんて・・・。)

 
20  良い本に 巡り会えた 夕べには 病になった ことにも感謝

   (何冊も読む時間がもてました)    

21 「癌の心配は なくなりました。」の一言を 心に深くうなずきぬ

   (世界にどんなに多くの会話がなされていても、この一言ほどうれしいものはない・・・)

22 「癌の心配は なくなりました。」に 疑い抱きぬ 時経つとともに  

    (疑い深いこんな自分が嫌いだ・・・)

 

23  人型に へこんだベッドが 気に懸かり 寝返り打ったり 妻に電話をしたり

 

24  マットレス へこんだところに モノあてがい 自分の型に 直して眠る